梅は、桜や桃よりも早く咲き、早春を告げる花として知られています。
現在、花見といえば桜ですが、奈良時代では「梅」が花見の花だったそうです。
「馥郁(ふくいく)たる梅の香り」という表現があるくらい、よい香りがすることでも知られています。
※馥郁とは、よい香りがただよっているという意味。
梅の花の香りにまつわる豆知識について調べたことをまとめました。
梅の花はどんな香り?
梅は、中国が原産地。奈良時代以前に遣隋使や遣唐使によって日本にもたらされました。
昔から愛されてきた花で、万葉集では百首以上が詠まれています。
植物では萩に次いで多いのだそうです。
「東風(こち)吹かば にほひおこせよ 梅の花 主なしとて 春な忘れそ」
菅原道真が大宰府に左遷されるとき、庭の梅の花に別れを惜しんで詠んだ歌は有名ですね。
歌の中で「にほひをこせよ(匂いおこせよ)」とあるぐらい、日本人には身近な香りです。
梅の花の香りはジャスミンに似ている?
梅の花の香りを知らない人に、どんな香りなのが説明するのは、むずかしいもの。
「甘い」といわれでも、いまいちピンとこないと思います。
ちなみに、梅の花の成分はジャスミンやクチナシの香りの成分と同じものだとか。
ジャスミンやクチナシの花の香りを知っている人なら想像がつきやすいかもしれません。
梅の香りがするクリームも販売されています。
梅の花の香りの良い品種は?
花を観賞する品種を「花梅(はなうめ)」、実を収穫する品種を「実梅(みうめ)」と呼びます。
ただ、明確な区分があるわけでなく花を楽しむことができて良い実が収穫できる品種もあります。
梅は種類・品種が豊富で、分類の仕方もさまざまです。
花梅の3系9性という分類によると香りが良いのは野梅系の品種ということになります。
野梅系:野梅性、難波性、紅筆性、青軸性
緋梅系:紅梅性、緋梅性、唐梅性
豊後系:豊後性、杏性
野梅系(やばいけい)
野梅系は原種に最も近い野梅から変化した種類です。花も葉も小さく枝も細く多いのが特徴。とても良い香りがします。
・野梅性(やばいしょう)
一重咲きと八重咲き。
花色は白色や淡い紅色など。
香りがとても良いのが特徴。
品種は、道知辺(みちしるべ)、初雁(はつかり)、冬至(とうじ)など。
・難波性(なにわしょう)
遅咲きで八重が多い。
香りがとても良いのが特徴。
品種は、御所紅(ごしょべに)、蓬莱(ほうらい)、難波紅(なにわこう)など。
・紅筆性(べにふでしょう)
ツボミは紅いのに花は白色の花が多い。
品種は、紅筆(べにふで)、古金欄(こきんらん)、内裏(だいり)など。
・青軸性(あおじくしょう)
花色が青白いのが特徴。
品種は、月影(つきかげ)、白玉(しらたま)など。
緋梅系(ひばいけい)
緋梅系は野梅系から派生した種類です。鮮やかな紅色、緋色の花をつけるのが特徴。花の色だけではなく枝や幹の内部も赤いそうです。
・紅梅性(こうばいしょう)
花色は明るく鮮やかな紅色。
品種は、紅千鳥(べにちどり)、緋の司(ひのつかさ)、鴛鴦(えんおう)など。
・緋梅性(ひばいしょう)
花色は紅梅性よりも濃く深みのある紅色。
品種は、鹿児島紅(かごしまべに)、周防梅(すおうばい)など。
・唐梅性(とうばいしょう)
花の色が変化するのが特徴。
咲き始めは淡いピンク、または紅色で咲き終わる頃には白色になる。
下向きに咲くのも特徴。
品種は、唐梅(からうめ)など。
豊後系(ぶんごけい)
豊後系は杏と梅を交配させた雑種です。花色は淡い紅色が多く杏と似ているのが特徴。
・豊後性(ぶんごしょう)
杏との交配の強い梅。
花色は桃色が多い。
遅咲きの大輪。
あまり香りがしない。
品種は、滄溟の月(そうめいのつき)、武蔵野(むさしの)、八重揚羽(やえあげは)など。
・杏性(あんずしょう)
杏と梅との中間品種。
遅咲きの大輪。
あまり香りがしない。
品種は、八朔(はっさく)、緋の袴(ひのはかま)、江南所無(こうなんしょむ)など。
鉢植え花梅の香りを自宅で楽しむ
梅の花の香りってよいものですね。
我が家では、例年、花梅の鉢植えは庭に置きっぱなしにしています。
なので花が咲くのは4~5月ころ。
今年の冬は、ふと思いたって家の中に取り込んでみました。
そうしたら思いのほか早くツボミが膨らんで、なんと、お正月に開花!
梅の花の香りって、庭に置いていたときは、特に意識していませんでした。
今は、玄関に置いてあるので、ふと香りが漂ってくることがあります。
夜に梅の香りがすると、姿は見えないけれど
「自分はここにいますよ!」
と、梅が主張しているような気がして、なんだか趣がありますね~。
昔から梅が愛されてきたというのも、なるほど、と思います。
鉢植え一つでこれほど香りがするのですから、梅の名所では、どれほどの香りがするものなんでしょうか。
北野天満宮、道明寺天満宮、太宰府天満宮、湯島天神など、各地の天満宮は梅がシンボルとされています。
そのため梅の名所になっているところが多いですね。
梅の花の香り、白梅と紅梅では違う?
白梅と紅梅では香りが違うそうです。
我が家にも白梅と紅梅の鉢植えはあるのですが、花の数が少ないので香りの違いを嗅ぎ分けることができません。
香りの違いを実際に確かめてみるためにも、一度は梅の名所を訪れてみたいものですね。
赤い花が咲く梅を「赤梅」ではなく「紅梅(こうばい)」と書くことを不思議に思ったことはありませんか?
実は、「紅梅」という表現は、梅が生まれた中国に由来するものだそうです。
中国で「赤」は、赤裸々や赤貧といった悪いイメージを思い起こさせる文字なのだとか。
そのため、赤色を表現するときは、今でも「紅」という文字が使われているそうです。
梅の花の香り まとめ
いち早く春の訪れを知らせてくれる梅の花。
まず、梅が咲いて、次に桜、というのが一般的ですね。
でも、日本列島を北上するにつれて梅と桜が同時期に咲く地域もでてきます。
東北地方北部から北海道にかけては、梅も桜も一緒に楽しめる贅沢なお花見ができるんですよ。
地元、青森県も咲く時期は一緒。
そんな訳で、今年のお花見は桜の花を楽しみつつ、梅の花の香りも意識してみたいと思っています。