ヤツデは、てのひらのように先が分かれた形をした葉が特徴の植物です。
天狗が持っている羽ウチワにも似ていますね。
日本では古くから縁起の良い植物として親しまれてきました。
今回は、ヤツデの特徴と種類、剪定時期と方法など育て方のポイントを紹介します。
ヤツデ(八手)の特徴と種類
ヤツデはウコギ科の常緑低木です。
原産地は日本で、福島県を北限として南の沖縄まで広く分布しています。
暖地では人家付近や社寺林など、いたるところで見られます。
ヤツデのもっともわかりやすい特徴は、独特の形をした葉でしょう。
厚みのある葉は深い緑色で光沢があり、30~40cmと非常に大きいです。
そして、深い切れ込みがたくさんあります。
漢字では「八手」あるいは「八つ手」と書きますが、葉が八枚あるという意味ではありません。
これは「数が多い」ことを表す数字として、末広がりで縁起の良い「八」が使われたということのようです。
実際、葉は7~11枚に分かれていますが、多くが奇数になっています。
また、テングノハウチワ(天狗の羽団扇)という別名もあります。
天狗は、いつもヤツデの葉を持っていますよね。
大きい葉に魔物を追い払う力があると考えられてこの別名がつけられたようです。
ヤツデは、邪鬼の侵入を防ぐ呪力あるものと信じられて、昔から庭や玄関に植えられてきました。
手のような葉が人を招くという「千客万来」の縁起を担いで植えられることもあります。
日陰でも育つので、鉢植えにして室内観賞用にも利用されます。
ちなみに医師のシーボルトは江戸末期に多くの日本の固有植物をヨーロッパに持ち帰りましたが、その中にヤツデも入っていたそうです。
西洋でも観葉植物として好まれ、フランスで作り出されたファトスヘデラ(Fatshedera)はアメリカ経由で日本に渡来しました。
開花期は10~12月です。
枝先に球状にまとまった白い花をたくさん咲かせます。
上部の花序には両性花、下部の花序には雄花がつきます。
ひとつひとつの花が実になり、翌年の春から初夏になると熟して黒くなります。
種類
たくさんの斑入り品種があります。
◆フクリンヤツデ(複綸八手)
葉縁に白色の斑が入る品種。
◆キモンヤツデ(黄紋八手)
黄色の斑紋が入る斑入りの品種。
◆ヤグルマヤツデ
葉の切れ込みがさらに細かい品種。
◆キアミガタヤツデ(黄網形八手)
葉に網目のような黄色の模様が入る品種。
ヤツデ(八手)の育て方
植え付けの時期は4~5月が適しています。
ヤツデは半日陰か明るい日陰を好む植物です。
1日に2~3時間程度、日が当たる場所で育てましょう。
ただし、夏場の直射日光や強い西日が当たるところは避けてください。
葉焼けをおこしたり、葉の色艶が悪くなってしまいます。
水もちと通気性のある土が適しているので、植え付ける前に腐葉土や堆肥を混ぜ込んでおくとよいでしょう。
水やり
地植えの場合、特に必要ありません。
鉢植えの場合は、土の表面が乾いてきたらたっぷりと水を与えます。
肥料
肥料を与えなくても十分に育ちますが、肥料をあげることで新しい枝や新芽の成長が促されます。
2~3月に油かすや骨粉を混ぜたものを株元に一握りほど与えましょう。
鉢植えの場合、葉の色が薄くなったり黄色く変色してくることがあれば油かすや緩効性化成肥料を少量あげてみてください。
病害虫
空気が乾燥する場所ではカイガラムシが発生することがあります。
そのまま放置しているとカイガラムシの排泄物から、すす病を併発させてしまう恐れがあります。
見つけ次第、歯ブラシなどでこすり落とします。
植え替え
植え替えをする時期は苗を植え付けるのと同じ4~5月です。
鉢植えの場合、2年に1度を目安に行います。
鉢から取り出したら根についた土を3分の1ほど崩して植え替えるようにします。
地植えの場合は、植え替えの必要はありません。
増やし方
挿し木、種まきで増やすことができます。
◆挿し木
7~8月が適期です。
その年に新しく伸びた枝の先を10cm程度切り取り、上の方に付いている葉を数枚だけ残し下葉は全て取ります。
葉が大きい場合は残した葉も小さく切って余分な水分が抜けないよう負担を減らしましょう。
切ったらすぐに水を吸わせ、赤玉土などに挿し込んだ後は土が乾かないようにして管理します。
根と葉がしっかりと生長してきたら植え替えをして通常通りに育てます。
◆種まき
種は5月頃に熟すので、それを使用します。
種まきは3~4月が適期ですが、種を収穫後すぐにまいてもよいです。
すぐにまかない場合は乾燥を防ぐため少し湿らせた川砂と一緒にビニール袋に入れて冷蔵庫で保管します。
鉢やポットに種をまいたら発芽するまで土を乾燥させないようにして日陰で管理しましょう。
庭木になるまで約5年かかります。
ヤツデ(八手)の剪定時期と方法
適期は5~7月です。
花芽が作られるのが8月頃なので、それ以降に剪定すると花が咲かないので注意してください。
剪定・切り戻しには「古くなった幹の間引き」「伸びすぎた幹の切り戻し」「葉切り」の3つがあります。
伸びすぎた幹の切り戻し
ヤツデは株元からたくさん幹を出して株立ち状の樹形になります。
幹自体はあまり枝分かれはしません。上へ上へと伸びていき、樹高は1~3mになります。
放っておくと、上のほうだけに葉が茂り、下のほうは幹が丸出しの姿になります。
高く伸びすぎた幹は下のほうの葉のある位置まで切り戻し、脇から新芽を出させるようにすると全体のバランスが整います。
古くなった幹の間引き
古くなった幹は途中で切り戻しても新芽を出さないので株元から切ります。
その後、切ったあたりから新芽が出てきます。
幹の数が3~5本になるようにするとスッキリします。
葉切り
葉が大きいので通路など場所によっては邪魔に感じることがあるかもしれません。
そんな場合に行うのが新葉を小さくする「葉切り」という作業です。
11~12月に成長点(新芽)に近い部分の葉を3枚ほど残して下の方の大きな葉を切り取ります。
葉の枚数を減らされた株は光合成をする力が落ち、成長がおさえられてしまいます。
その結果、生えてくる葉は全体的に小さくなります。
葉切りは成長を抑える作業なので、毎年行うと株全体の勢いが衰えます。
3年に1回が目安です。
さいごに
今回は、ヤツデの特徴と種類、剪定時期と方法など育て方についてまとめてみました。
ヤツデは青森県でも庭木をよく見かけるお馴染みの樹木です。
自生地の北限が東北地方の南というのは意外ですね。
青森県で自生してはいないのかもしれませんが、庭植えなら問題なく育っています。
冬には雪に埋もれることもありますが寒さには結構強いのかもしれません。
ところで、1日の日照時間が1~2時間以下の日当たりの悪い日陰でも生育が可能な植物を陰生植物といいます。
ヤツデもそんな日陰に耐える植物のひとつ。木なので「陰樹」という言い方もします。
日当たりの悪い場所にはピッタリの木というわけですね。
我が家の日陰の庭には、すでに同じ陰樹であるアオキがありますが、ヤツデも育ててみたくなりました。
光沢のある大きな葉は存在感があり、斑入り品種を選べば暗い庭が明るくなりそう。
一番の魅力は、日本原産の植物なので育て方が簡単で手入れしやすいというところ!
種を採ることができたら鉢植えにして室内に飾るのも楽しそうです。
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